イメージ画像

(将棋の方の)雑記  競技者の涙

こどもの日に行われた競馬のGⅠNHKマイルカップは、10番人気マイネルホウオウが勝利。アタマが人気薄であれば当然高配当だが、ギャンブルとして以上に、競技として印象に残るレースだった。
 
鞍上の柴田大知騎手はゴール後、馬場を引き返して地下道を戻り、検量室に入ってテレビインタビューと、その間ずっと泣きっぱなし。テレビ画面では鼻が真っ赤になっていた。インタビュアーに気持ちを聞かれても声が詰まって答えられず、位置取りの質問にも「よく覚えていません」。
柴田大知騎手は噂によればプライベートな問題が絡んで騎乗の機会に恵まれず、苦しい時代が長く続いたということ。もちろん当事者にしか分からないことで、それに関しては一般人にはなんとも言えないところだが、一昨日のテレビに映し出された歓喜の涙は間違いなくホンモノだ。全精力を賭けて勝負した競技者の涙というのは、うれし涙であれ悔し涙であれ観戦した者の心を揺さぶる。元々好きなジョッキーだったが、柴田大知の万感の思いが画面から伝わってきて観ているこちらも胸が熱くなった。数ある中央競馬のGⅠでは歴史も浅くて地味なレースも、この柴田大知の大泣きでとても印象的なレースになった。
 
競馬には時おり涙がある。勝ったジョッキーがインタビューで涙を流すのだ。GⅠで100連敗以上していた田中勝春がようやく皐月賞で勝ったときは、ジワッと目が潤み、長かった重みが言葉以上に語られていた。園田から移ってきた小牧太は桜花賞での勝利インタビューでマイクを向けられた瞬間に涙。地方の草競馬から出発して中央のクラシックを勝ち取るに至ったそれまでのことが一気に思い出されたかのような感情の爆発。泣き虫ジョッキーで有名だったので誰かがタオルを渡していたようで、しばらく顔を塞いで話せなかった。前出の柴田大知は、まず2年前、障害のGⅠを勝った時点ですでに大泣きしていた。
 
将棋の棋士にはテレビ棋戦で感動、感嘆、感激などさまざまに心を揺さぶってもらっている。驚愕もある。しかし残念ながらもらい泣きに関してだけは無縁。誌面では涙を流す場面が語られることがあるが、リアルタイムでは目にしない。これがスポーツと違って地味に映るところだろうか。
 
これはしかし仕方のないところで、喜怒哀楽は体を動かしている状況でないとなかなか表に出てこないものだ。たとえばサッカーを見てもそうで、選手はゴールが決まると大喜びで走り回る。これはゴールを決めた選手以外も皆走り回るが、じっと一点に留まっているキーパーは走り回らずにその場でガッツポーズや万歳というのが多い。動いている流れからでないと、なかなか走り回れないものだ。
だから棋士も、たとえ感情を表に出すことを許されたとしても、数時間もじっと一点を見つめて座っている状況から、観る者の心を揺さぶるほどの強い感情を表に出すことはむずかしいだろう。
 
競技者の涙はひとつの華だが、将棋ファンはそこに関しては諦めないといけない。あれだけ高度な競技を楽しませてもらっているのだから、全部が全部を求めるというのはムシがよすぎるというものだろう。
 

このエントリーを含むはてなブックマーク Buzzurlにブックマーク livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録

タグ

2013年5月7日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:ブログ

トラックバック&コメント

コメントは受け付けていません。

-->

このページの先頭へ