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薄れる正月気分

子ども、といってもまだ小学校にも上がっていない小さな頃の、正月の一場面がぼんやりと記憶に残っている。一家でとなり町の親戚の家にタクシーで向かったのだが、車中、運転手氏が昼飯を取れないと嘆いていた。なにしろその時代、正月三が日はどこもかしこも店が閉まっていて、街はゴーストタウンの様相だった。

「ほらあの、すかいらーくっつうの、あれくらいなんですわ、やってるの。あそこ、高いのかねぇ」

家族連れだからだろう、運転手氏が聞いてきて、ウチの親はラーメン屋や定食屋なんかより高いよと答えていた。出たてのファミリーレストランは今と違ってご馳走だったのだ。

乗車中ずっと嘆き節を聞かされた親は正月気分と相まってなのか、これで昼飯食ってよと降り際に別途千円を運転手氏に握らせたのだった。
本当に、なんでもないといえばまったくなんでもない一件。でもそれが不思議なことに、ずっと記憶に残っている。もしかしたら、もはやゴーストタウン化しない正月とのギャップで、強く印象付けられているのかもしれない。

そう考えてしまうくらい、今と当時の差ははげしい。あの頃は個人商店どころか大手スーパーまで正月休みで閉まり、年始は野菜一つ買えなくなった。それが今やどのスーパーも営業時間の短縮すらないほどだ。そうなれば暮れに慌しく準備する必要などなく、年末年始の気分が薄れるのも当然となる。風情は薄れるが便利になったので仕方がないところか。

 

街だけでなく、テレビもそう。今は正月気分が薄れてしまっている。ひと昔前はレコ大に紅白が大晦日の定番で、みんなそろって観るものだった。それがBS、CSと選択肢が増えて、年末年始と関係ない、わが道を行く番組で気ままにすごすことができるようになった。

囲碁将棋チャンネルは昨年大晦日も一年最後の放送という気配はまったくなく、火曜日ということでいつものように「銀河戦」を流していた。ぼくはそれを観賞。解説もおもしろく、楽しませてもらった。その晩観たのはその「銀河戦」と「ゆく年くる年」だけだったので、テレビから受ける年末気分はとても薄かった。

 

いずれもっと年末年始が日常化して、風情が失われていくことだろうと思う。

 

 

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2014年1月2日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:ブログ

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