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悩める男に花を!

 今どきのウルトラマンは分からないが、ぼくが子どもの頃のウルトラマンはほぼパターンが決まっていた。怪獣が現れると、まずは地球を防衛する精鋭隊の戦闘機が出撃して怪獣を倒そうとする。初代ウルトラマンでいえば「科学特捜隊」だ。そして戦闘機はあえなく怪獣に撃墜され、そこでウルトラマンが出てきて怪獣と戦い、無事にやっつけてカラータイマーの音とともに去って行くというストーリー。前半で一度ウルトラマンがやられたり、怪獣をやっつけずに宇宙へ帰したりなど、細かな違いはもちろんある。しかし大筋はこのストーリーなのだ。

それにしても、「科学特捜隊」をはじめとしてウルトラマンシリーズに出てくる地球防衛隊の戦闘機はこれでもかというくらい怪獣にやられた。国防費がとんでもない額になっちゃってるんじゃないかと心配してしまうくらいだ。

なかで一つ印象に残っている話があって、隊員のアラシだったかイデだったかが、毎回怪獣にやっつけられてしまうことを悩むのだ。自分たちの隊は怪獣にまったく無力で、いつもウルトラマンにやっつけてもらっている。ウルトラマンさえいれば充分で、おれたちなんか必要ないんじゃないか、とウルトラマンに変身する前の隊員ハヤタに熱く悩みを打ち明けるのだ。もちろんアラシだったかイデだったかは、ハヤタがウルトラマンだということは知らない。

たしかにあれだけ長いこと結果が出せずにいたら悩むのも当然というものだろう。それくらい頻繁に撃ち落されてしまっていて、むしろそれでも死なない幸運を喜ぶべきだと思うのだが、悩みというものは人それぞれなのでしょうがない。
この話はここ数年、将棋ペンクラブの活動の一環として出ている社団戦にオーバーラップして、社団戦の始まる夏になるとちょくちょく思い出すようになった。

我々、将棋に関する集団ということで、とても強いのではと誤解されることがよくある。しかし将棋が強い幹事は大学OBや会社など、とっくに他チームのメンバーになっているのだ。このチームは経験の浅い幹事が呑んだ勢いで参加を決めたチームだけで、その証拠に現在最も下の5部に属している。勝ち星は求めず、楽しく指そうというのがモットー。完全に打ち上げ重視なのだ。

それでも、結果が出ないことを思い悩む方がお一人いた。けっこうな数を指すので、みんなそれぞれどこかで幸運が訪れてダルマさんに目が入るのだが、どうしてだかその御方には幸運が訪れない。訪れないどころか不運な逆転負けもいくつかあった。ダルマではなく成績表に黒目が並んでいく。とても誠実な方なのでチームに迷惑をかけていると気にしていて、まとめ役をしているぼくは、本当に気にしないでくださいと何度言ったか分からない。正直なところ、他の人は負けてもいいからあの御方に勝ってほしいと密かに願いながら、いつもメンバー表を組んでいた。

その御方、社団戦当日にかなり疲れた感じのときもあった。それを尋ねると、前夜眠れなかったと言う。いやぁ本当に気楽にやってください。ぼくは頼むように、そう声をかけるしかなかった。上記のウルトラマンの話では、悩む隊員にウルトラマンが怪獣にとどめを刺す役割を任せ、花を持たせる。結果の出た隊員は悩みも解消され、再び職務に励むようになる。しかしそんな美談もドラマという作り物の世界ならではで、現実世界はただ単に願うのみなのだ。あぁ、あの御方に結果が出ますように、と。

その願いが通じたのか、というのは凡庸な言い回しだが、ともかくその御方、2年目、つまり昨年だが、ついに白星を上げた。居飛車の堂々とした将棋で、横で見ていたぼくは自分の将棋そっちのけで熱くなった。

笑顔でメンバーの集まる場所に戻ってきたその御方は、みんなに祝福された。みんながその御方の一勝を待ち望んでいたのだ。

 
今年もだんだん社団戦が近付いてきた。ぼくは参加者の皆さんが楽しく指してくれることを願うのみ。結果はまったく気にしていない。

将棋ペンクラブはブースで販売、入会案内等行っていますので、お時間ありましたら覗いてみてください。

 

 

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2013年5月16日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:ブログ

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