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ペア将棋戦  その2

会場に入ると、なんとなく虚脱した雰囲気が漂っていた。戦うぞと乗り込んできて、それが流れてしまったのだから当然というものかもしれない。
それでも集まった人たちだけでオープン戦を行うというので、4人で受付を済ます。お弁当もペットボトルのお茶も用意されているが、参加費は取らないという。
 
窓は暗く、雨が叩きつけている。おとなしく待っているのもなんなので、我々でオープン戦を始めた。なんと中野さんと中丸さん、この日のために将棋センターで練習をしたという。そのときに打ち合わせをしたのであろう角道を止めない四間飛車を、さっそく採用してくる。こちらは居飛車で対抗。すぐに角を交換され、駒がぶつかってむずかしい局面になったが、その辺りでぼくと恵子さんの名前が呼ばれてその一戦はお開きとなった。
 
指示された席に向かう。相手は若い方たちだった。男性氏はにこやかながらも、駒を並べる手付き、振り駒の手馴れた感じから強さをにおわせる。恵子さんに迷惑をかけないようにポカだけはしないようにと、気を引き締めた。
ぼくと恵子さんは中野さんたちと違って練習は一切なし。まぁできるだけ四間飛車で、とたった一言の、実に大雑把な打ち合わせだけで臨んでいた。しかしこの一戦は出だし、相手が飛車を振る感じだったことから、悩んだ末に相振りを避けて居飛車にしてしまった。
ところが相手は飛車を振らずに居飛車。変則的な手順も、結局は相矢倉に進んでいった。
「なにこれ?」と相手の女性が呟く。変則的な手順か、想定外の相居飛車か、その辺りのことに違和感を持って呟いたのだろう。しかし相手の男性、にこやかに「ん? 将棋」と返す。そこでぼくも、「そう。麻雀じゃないですよ」と付け加え、男2人で笑いあった。
 
この将棋は終始和やかな雰囲気で、相手の男性氏が「お弁当とお茶が出るのに参加費を取らないなんて、来年はないかも」と呟き、ぼくが「その埋め合わせで、社団戦のカレーが100円値上がりますよ」と返す。するとさらに相手の男性氏、「じゃあ外に食べに行かないよう休憩時間が10分短くなりますね」と続けてくれる。他にもところどころで話しが出て、戦う雰囲気の薄い、不思議な一戦となった。
 
中盤で面白い攻め手順を見つけて、作戦タイムを取る。恵子さんの方でもシンプルな手順を示したが、「いやいや、こっちの方がいいですよ」とぼくはそれを却下して、ぼくの手順で進めることにした。
相手の受けも予想通りでこれは攻めが通ったかに感じたが、相手の女性が指した歩の犠打が好手で、攻めに迫力がなくなる。その後は攻守入れ替わり、なんとか凌いだ後に無理攻めを敢行もしっかり受けきられ、最後は下段に玉を落とされて歩の穴熊になったようなカタチで投了。いやぁ、ペア将棋は投げ場がむずかしいですねぇ。
 
感想戦では、相手の男性氏に恵子さんが言った攻め筋を示された。あの作戦タイム時でぼくが一蹴した手順だ。わぁ!と、ぼくは頭を抱えてしまった。
 
礼をして若いペアと別れ、ぼくは恵子さんに謝って、弁当を取りに行った。
 
(つづく)

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2013年10月10日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:ブログ

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